ABOUT

水野惠梨佳は「EAUSEENON(オウシーナン)」を立ち上げるよりもずっと前、まだアントワープで学生だったころにある服を思い浮かべる。
それは「未亡人(widow)」をテーマにした服だった。
そのようなテーマの服に人が想像するのは、黒い服であったり黒いベールで顔を隠す女性の姿だろう。

しかし、彼女は違った。すべてをピンクと花柄で未亡人のための服を発想する。きっと不思議に思う人もいるに違いない。
なぜ、ピンクと花柄なのかと。

「未亡人たちは夫たちと過ごした思い出を悪いとは思っていないはずで、
その気持ちを幸せに送り出したかった。彼女たちの幸せを色に表現しようと決めた」

暗く重く見える世界であっても、美しい角度から世界を見つめる彼女の姿勢は、幼いころに学んでいた生け花に通じている。
生け花で学んだことは日本伝統の礼儀や謙虚さと共に、華やかさだけでなく質素なものにも目を向ける姿勢であった。

幼少時から育まれた感性と姿勢は、東京とアントワープでの経験を経て2015年に設立した自身のブランドで花開いていく。
EAUSEENONはただ美しいだけの服を作ろうとするブランドではない。

人が不気味さや奇妙な感覚を覚えるものであっても、そこにだって美しさがあるはずだとメッセージを発する服を届ける。
人間は美しいものにだけ心惹かれるのではなく、不気味で奇妙なものにも心を惹かれてしまう。
醜さに美しさを覚えても孤独になる必要はない。EAUSEENONはその孤独を肯定し、個性とする。

そして母となり、子を持つ親となったことで、デザイナーとしての彼女にも変化が現れる。
服は生活のために快適であること。服は新しくあると同時に、子どもと過ごしていても、仕事をしていても気持ちよく暮らすことができるなら、日常を幸せにする。

そのことを水野惠梨佳はいっそう大切にするようになった。 花は美しさで人々を魅了する。
だけど、世界は美しい花ばかりではない。名もない野に咲く花にも美しさがある。
年齢や価値観で縛られることはない。自分の好きに自由であればいい。

EAUSEENONは解放する。あなたの感性を。

Designer

水野惠梨佳 Erika Mizuno

文化服装学院、アントワープ王立芸術アカデミーでファッションを学び、日本に帰国後、帽子メーカーを経て2015年に自身のブランド
「EAUSEENON(オウシーナン)」を設立。
ブランドネームは、自身の名でもあるエリカの花に由来する。
ブランドの象徴である刺繍と花をモチーフにしたオリジナル素材は、女性の中に潜む少女性を加工することなく露わにし、ガーリーなエレガンスを甘くも辛いシリアスな服へと仕立てあげる。